司法書士活動日誌 あいおいくんがゆく!
2019年10月10日 [福井 圭介の活動日誌]
【皆さんの疑問に答えます!】相続07 借地の相続で譲渡承諾料を請求された
本ページをご覧のみなさま
司法書士の福井です。
お客さまからご質問をいただくことの多い相続、遺言、成年後見など法律に関する話題ついて、本ブログでわかりやすく解説していきます。
新聞やテレビで聞いたことはあるけど意味はよくわからない、内容がわかりにくいことが多いと思いますので、法律に親しんでいただける入門書としてご活用いただければ嬉しいです。
<過去の掲載記事: あわせてご参考になさってくださいね>
▷ NO.1 「相続前に準備しておくべきこと」
▷ NO.2 「相続人の一人が遺産を隠していた」
▷ NO.3 「相続人の一人が遺産を独占されている場合」
▷ NO.4 「遺産分割後に他の財産が出てきた」
▷ NO.5 「遺産分割前に相続人が死亡してしまった」
▷ NO.6 「相続してから半年後、借金取りが現れた」
今回は「相続 NO.7 借地の相続で譲渡承諾料を請求された」についてです。
父が昨年、他界しました。相続人は、私と弟の2名。遺産は、預貯金と借地上の建物だけです。弟と遺産分割協議を行い、私が借地上の建物を相続し、弟が預貯金を相続しました。その後、地主から借地権者が変わったことを理由に譲渡承諾料の支払請求がありました。これは支払わなければならないのでしょうか?
譲渡承諾料とは
借地権を地主に無断で譲渡した場合、原則として、契約の解除事由になります(民法612条)。ですから、借地権を譲渡するには地主の承諾が必要になります。譲渡承諾料とは、この借地権譲渡にあたって地主が借地権の譲渡を認める代わりに借地権者が地主に支払う対価になります。
相続による借地権の移転は解除理由にならない
では、相続で借地権を取得した場合、地主は借地権者が変わっていることを理由に賃貸借契約を解除することができるのでしょうか。一見、借地権者が被相続人から相続人に変わっているため、借地権が譲渡されているように思えます。しかし、このケースでは地主は借地権の無断譲渡を理由に土地の賃貸借契約を解除することはできません。
なぜなら、通常の借地権譲渡は借地権者から特定の譲受人に借地権が譲渡されるのに対し、相続の場合、相続人は相続発生によって被相続人の地位をそのまま受け継ぐため、「借地権譲渡がなされたと言えない」からです。
譲渡承諾料の支払い義務もなし
譲渡承諾料についても、同様の理由で相続人は地主に対して譲渡承諾料を支払う必要はありません。そもそも相続による借地権の移転については民法612条に規定されているとおり「賃貸人の承諾が不要」なわけですから、承諾の対価を支払うべき根拠がないのです。
もっとも、賃貸人である地主さんとの関係では、相続後の地代の支払いなど継続的な関係が続きますので、借地権を相続した相続人は少なくとも一度は挨拶に行くなど、良好な関係を維持するための配慮が必要でしょう。
司法書士の福井です。
お客さまからご質問をいただくことの多い相続、遺言、成年後見など法律に関する話題ついて、本ブログでわかりやすく解説していきます。
新聞やテレビで聞いたことはあるけど意味はよくわからない、内容がわかりにくいことが多いと思いますので、法律に親しんでいただける入門書としてご活用いただければ嬉しいです。
<過去の掲載記事: あわせてご参考になさってくださいね>
▷ NO.1 「相続前に準備しておくべきこと」
▷ NO.2 「相続人の一人が遺産を隠していた」
▷ NO.3 「相続人の一人が遺産を独占されている場合」
▷ NO.4 「遺産分割後に他の財産が出てきた」
▷ NO.5 「遺産分割前に相続人が死亡してしまった」
▷ NO.6 「相続してから半年後、借金取りが現れた」
今回は「相続 NO.7 借地の相続で譲渡承諾料を請求された」についてです。
父が昨年、他界しました。相続人は、私と弟の2名。遺産は、預貯金と借地上の建物だけです。弟と遺産分割協議を行い、私が借地上の建物を相続し、弟が預貯金を相続しました。その後、地主から借地権者が変わったことを理由に譲渡承諾料の支払請求がありました。これは支払わなければならないのでしょうか?
譲渡承諾料とは
借地権を地主に無断で譲渡した場合、原則として、契約の解除事由になります(民法612条)。ですから、借地権を譲渡するには地主の承諾が必要になります。譲渡承諾料とは、この借地権譲渡にあたって地主が借地権の譲渡を認める代わりに借地権者が地主に支払う対価になります。
相続による借地権の移転は解除理由にならない
では、相続で借地権を取得した場合、地主は借地権者が変わっていることを理由に賃貸借契約を解除することができるのでしょうか。一見、借地権者が被相続人から相続人に変わっているため、借地権が譲渡されているように思えます。しかし、このケースでは地主は借地権の無断譲渡を理由に土地の賃貸借契約を解除することはできません。
なぜなら、通常の借地権譲渡は借地権者から特定の譲受人に借地権が譲渡されるのに対し、相続の場合、相続人は相続発生によって被相続人の地位をそのまま受け継ぐため、「借地権譲渡がなされたと言えない」からです。
譲渡承諾料の支払い義務もなし
譲渡承諾料についても、同様の理由で相続人は地主に対して譲渡承諾料を支払う必要はありません。そもそも相続による借地権の移転については民法612条に規定されているとおり「賃貸人の承諾が不要」なわけですから、承諾の対価を支払うべき根拠がないのです。
もっとも、賃貸人である地主さんとの関係では、相続後の地代の支払いなど継続的な関係が続きますので、借地権を相続した相続人は少なくとも一度は挨拶に行くなど、良好な関係を維持するための配慮が必要でしょう。