相続・遺言・遺産整理なら司法書士法人あいおい総合事務所<戸塚区・泉区・栄区>

司法書士法人 あいおい総合事務所
  • HOME
  • 営業時間・交通
  • お問合せフォーム

司法書士活動日誌 あいおいくんがゆく!

2020年07月13日 [清水 敏博の活動日誌]

こころに晴れ間を くらしに活力を  成年後見 編 vol.3「事例から学ぶ 任意後見制度の理想的な活用法」

みなさま こんにちは! 司法書士の清水です。
 当事務所は、2000年の成年後見制度開始(認知症等により判断能力が低下した方を支援するための国の制度)から延べ300人以上の方々の人生の晩年における様々なくらしのご相談をお受けしたり、成年後見人として直接くらしをサポートしてまいりました。
 このブログは、これまでの20年間の実際の経験にもとづき、みなさまのより良い老後のくらしにお役立ていただくためのブログです。

 a

  ここ最近、任意後見制度に関する説明を聞きたい、利用したいというご相談がとても増えております。その背景には、高齢化の進展はもとより、平均寿命の伸長(面倒を看る子供や兄弟の高齢化)、核家族化、家族間のコミュニケ―ション不足やすれ違い、家族観の変化、夫婦共働きの増加(時間や心理的余裕の喪失)、親族にはできるだけ負担を掛けたくない など様々でありますが人生100年と叫ばれる中で、新型コロナウィルスの影響もあり、これからのくらしに不安を抱えている方がとても増えてきているように思います。

成年後見制度は、@現在すでに判断能力が低下した方に対し、判断能力の状況に応じて補助人・保佐人・後見人という人を家庭裁判所で選任してもらってサポートを受ける「法定後見制度」とA現在は判断能力には問題ない方が、自分の意思で将来判断能力が低下した際に備えて予め任意後見人という代理人を決めておく「任意後見制度」(判断能力が低下し、任意後見監督人を選任した後に契約の効力自体は生じます。)の二つがあります。
高齢化社会の進展にともない、任意後見人やその権限(代理権)、サポートの仕方など自分らしい老後の生活を自分で決められる任意後見制度のさらなる活用が望まれております。

そこで今回は、実際にあった事例をもとに任意後見制度の理想的な活用の一例をお話ししたいと思います。

<事案の概要>
 ○ご相談者  橋 みどり さん(仮名) 女性 56歳
 ○ご家族構成  両親はすでに他界し、結婚歴はなく子供もいない。兄が他県にいますが以前からあまり仲が良くなく長期間親交がない
 ○職   業  無職(元 大手物流会社のキャリアウーマン)
 ○事案の概要 
(1)みどりさんは、これまで大手物流会社のバリバリのキャリアウーマンとして30年以上勤めておられました。

(2)入社以来、仕事一筋で実績を積み上げたことで会社での評価も得られ、充実した毎日を送っていました。一方、心臓に持病を抱えおり、50歳を過ぎたころから身体的な衰えを日増しに感じるようになりました。仕事自体に不満はありませんでしたが、同居していた親の介護もようやく終わり、これから先どのような人生を送るべきか、このまま仕事漬けの毎日でよいのか等あれこれ考えるようになりました。

(3)時間をかけていろいろ考えた結果、これからは自分のやりたいことをメインでやっていこうと、早期退職制度を利用し55歳で退職することにしました。

(3)会社を早期退職し、今までできなかった旅行や趣味でこれからの人生
を楽しみたいと思う反面、何かあったときにフォローしてもらえる身近 親族がいないので、病気や事故で入院した場合など、いざ自分に何かあったときのことがとても気になっておりました。また、父は生前認知症を発症し介護でとても苦労したので、親族にはそういった面倒を掛けたくないと思っておりました。
  
(4)いざ自分に何かあったときのため、また、自分が認知症等になったとき
のサポート制度にはどういったものがあるか、インターネット、新聞や雑
誌、各種セミナーに参加するなどいろいろと調べ、任意後見制度という制度があることを知り、詳しく聞くために当事務所にご相談に来られました。
 
(5)当事務所では、ご本人のご心配や悩み、ご要望を聞きし、ご本人にとっ
  て最善と思われる任意後見制度とともに、見守り契約及び財産管理契 約、死後事務委任契約、遺言書の作成を提案しました。

*見守り契約とは、司法書士と定期的に連絡を取り合い、コミュニ
ケーションを図るとともに、何か心配や悩みごとがある場合にはアドバイスやサポートを受けられるかかりつけ医のような契約です。また、財産管理契約とは、判断能力には問題はないものの、病気や事故などで入院するなど身体的な問題で動けない場合に、生活費や入院費の支払い、各種契約、行政手続きなどに関する代理権を与えておく契約です。死後事務委任契約とは、亡くなった後の医療費や介護費用の支払い、家財道具の処分、行政諸手続き、葬儀や納骨などに関する代理権を与えてく契約です。
 
(6)その後公正証書で見守り及び財産管理契約、任意後見契約、死後事務委
任契約、遺言書を作成したことで、契約時点から亡くなった後まで切れ目のないサポートを受けられるようになり、ご本人はとても安心されました。

(7)当所との契約後、近隣とのちょっとしたトラブル、商品契約等に関すること、行政手続きに関することで困ったときには都度ご連絡をいただき、アドバイスをさせていただきました。また、趣味や習い事をする際の緊急連絡先になったり、持病の悪化による入院した際の入院諸手続き、入院費の支払いを代行するなどサ様々なサポートを行い、現在も安心して趣味や習い事を愉しみ充実した毎日を送られております。

 <本事案のポイント>
(1)老後の生活設計を自分でしっかりと考えていたこと。
   ご相談者である橋さんはとても几帳面な方で、退職後の生活について、自分で詳細な生活設計を立て、また、やりたいことややりたくないこと、資金計画に至るまでしっかりと時間をかけて考えておられました。したがって、相談に来られた際には、当事務所に具体的にどのようなサポートをしてほしいかといったことが明確になっておりました。

ご相談者の中には、これからの自分の老後の生活設計がなされていない方が非常に多く、ご相談者によっては私が老後の生活に関する提案をす ることさえあります。ご自身の今後のくらしに関することなので、どういったくらし方をなされたいかは、やはりご自身でお考えいただく必要があります。そのうえで、ご自身でお考えいただいた生活設計に関して法的な観点やこれまでの経験にもとづくアドバイスをしたり、それを実現するために司法書士が伴走型のサポートさせていただくことが最適です。

(2)任意後見制度や契約内容その必要性を自分で十分理解したうえで利用されたこと。
    ご相談者の高橋さんは、当事務所にご相談されるまでに、自分自身でいろいろ調べたうえでご相談に来られました。自分で調べても分からなかったことや分かりにくかったこと、また、制度利用にともなう実務的なこと、専門家としての経験にもとづくアドバイスを受けたいことなどが明確になっており、それらについて当事務所で詳細な説明を受け、改めて制度の利用の必要性を感じ、また契約内容を理解されたうえで納得して契約をされました。

当事務所において、任意後見等の契約書を作成する際には、通常ご本人と複数回面談して詳しいお話を聞き取りを行った後で契約書案を作成します。契約書は普段なかなか読みなれない表現で記載されておりますので、ご理解いただけるよう内容を丁寧にご説明します。
ほとんどの方は十分に制度や内容を理解されたうえで契約をされます が、ご相談者中にはとにかく不安や心配から解放されたいという気持ちが先立ち、契約書の作成だけを優先し、しっかりと説明を聞かないで、若しくは介護サービス業から勧められてあまり必要性を理解しないまま、契約をなされる方がいます。

そういった方は、任意後見制度や契約内容の理解が乏しく、実際のサポートと自分が考えていたサポート内容とのギャップを感じる方がいます(あまりにギャップが多いと契約を終了せざる得ない場合もあります。)。例えば、任意後見制度は身上監護、財産管理の法律行為を代理で行うものであり、介護などの事実行為はサポート範囲には入りません。これらは別途介護事業所に依頼することになるなど。司法書士はくらし全般を見渡しながら最適なくらしを送っていただけるようサポートする役割を担います。
したがって、不安や心配から解放されたいがため契約書の作成を急ぐのではなく、ご自身の今後のくらしに大きくかかわることなので、制度や契約内容で不明な点があれば都度確認するなど、十分に理解し納得したうえで契約を締結されることをお勧めします。
 
(3)早い段階から将来に備え動いていたこと。
   ご相談者の橋様さんは、契約締結の5年ほど前から今後のくらしに関し考えはじめ、少しずつ考えたり、調べたり、準備をされておりました。ご自身で予めそういった準備をなされていたので、時間に余裕をもって契約まで進めることができました。契約してから1年後に体調を崩し緊急入院をされましたが、当事務所とのサポートによる連携もうまくはかれ、懸念していた入退院も大きな問題なく対応することが来ました。もし、将来に備えて早めに契約等の準備が整っていなかったとしら、入退院の際にはパニックが生じてしまっていたことでしょう。ですから、早い段階から動いて備えておくことはとても大切です。

当事務所では様々な成年後見制度利用に関する事案のご相談になっておりますが、そのほとんどは何らの措置を講じないまま認知症になり裁判所に申し立てる法定後見制度の利用となっております。法定後見制度を利用するときには、すでにご本人の判断能力も大きく低下しているので、家庭裁判所が決めた後見人等の考えにもとづいてサポートを受けることになってしまいます。後見人等はご本人の立場に立って常にサポートをしますが、それまでのご本人の人生や大切にしてきたものなど情報も少なく、そのサポートが真にご本人が望まれるのか?はなかなか分かりません。
したがって、お元気なうちから少しずつ将来に備えて準備されることはとても大切です。

今回のブログは実際にあった事例に基づき、最適な任意後見制度の活用法ついてお話させていただきました。人生100年時代、自分のより良いくらしを送れるようにするために、ぜひご参考になさってください。


PageTop

  • LTR CONSULTING PARTNERS
  • くらしの健康診断
  • 一般社団法人オーケストライフ
司法書士法人 あいおい総合事務所