2018年07月19日
自筆証書遺言を法務局で保管してくれる制度の課題
皆さま
こんにちは。司法書士の清水です。
私はたえず最新の法改正や動向をキャッチアップし、より良いサービスをお客様に提供していくことをモットーにしております。
今回は平成30年7月6日,民法の相続分野の規定を見直す民法改正案の一環で成立した「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(平成30年法律第73号)についてご紹介します。
これは、増加する相続トラブルを予防するために、生前に自分で作成する「自筆証書遺言」を法務局で保管してもらえる制度です。
※遺言書保管法の施行期日は公布の日から2年以内に施行されることとされていますが、現時点ではいつから遺言書の保管を申請できるか決まっていませんのでご注意ください。
自筆証書遺言は、公証役場で公証人の立会のもとに作成する公正証書遺言と違い、紙とペンがあれば自分一人で書き遺すことができる大変手軽なものです。
しかし、自筆証書遺言を作成しても、書き直しているうちにどれが新しいものかわからなくなってしまったり、せっかく作ったのに、いざという時にどこにしまったのか相続人に気付いてもらえなかったりすることがあります。
また、自分の死後に遺言書の内容を先に見て内容を良く思わない相続人に捨てられたり、改ざんされる可能性があります。
せっかくの遺志が活かせないばかりか、相続をめぐるトラブルにつながりかねません。
このような問題を解決するために、最寄りの法務局で自筆証書遺言を保管してもらえるようになります。
▷制度の詳細は法務省HPをご覧ください。
法務局で保管してくれる制度はできましたが、まだ積み残しの課題はあります。
@ 自筆証書遺言の内容の妥当性について
遺言は法的効力が認められるような形式に則って作成することも大切ですが、内容にも注意を払う必要があります。法律上の様式を整えつつ、自分の想いを形にし相手に確実に伝えるための言葉の選び方などある種のノウハウが求められます。
当所にも遺言の書き方について相談が寄せられますが、自分が遺言を残したことで、逆に相続トラブルになって仲がよかった親族がいがみあってほしくない、相続人である子どもたちに自分の想いをきちんと伝えられるようにしたい等、内容や具体的な書き方について悩まれている人が多いです。
法務局でも法的に有効な形式についてアドバイスをもらえるかもしれませんが、内容まで踏み込んで相談にのってもらうのはなかなか難しいのではないかと思います。
A 遺言執行状況のチェック
遺言の内容を実現するために必要な手続きをしてくれる遺言執行者に利害関係のある親族が選ばれてしまうと、遺言の内容によっては遺言者の遺志と相続人の利益が一致せず、相続人の間でトラブルが生じてしまう場合があります。
しかし、今回の法改正では確実に遺言を実現してくれたのかをチェックする機能まではありません。
今回のように高齢社会など時代の変化にあわせて法律の見直しはなされますが、法律はすべての問題を解決できる万能の手段ではありません。ただ法律をうまく使いこなせば、より良い生活を手に入れることができます。
当所では、司法書士としての専門知識と数多くのご相談をお受けしてきた経験をもとに、お客様おひとりおひとりのご事情を踏まえて、解決策や手続き方法をご提案させていただきます。まずはお気軽に当事務所までご相談くださいね。