親子で話そう!老後と介護
「親が気分を害してしまったらどうしよう」、「親と口論になってしまうかも」と思うと話を切り出すことができずに、先延ばしになりがちです。 しかし、病気や事故、自然災害やコロナウィルス流行など予期せぬことは突然やって来ます。 また、お金や健康、介護などの不安も尽きません。 だからこそ、万が一の時に慌てないよう、親子でこれからのことを話し、必要な情報を共有しておく「準備」が今まで以上にとても大切になってきます。 準備をしておくことで日々の安心につながりますし、生活をより愉しめるようになります。 一方、情報共有や準備をしておかないと、大変なのは親御さんだけではありません。お子さんにも多大な負担がかかってしまいます。 |
情報共有や準備をしていないとどうなる?
(親が病気や事故などで意思表示ができなくなった時)
親の希望する生活が送れなくなる
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子どもに迷惑がかかる
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親御さんに病気や介護、相続について話すときのポイント
20年にわたり、これまで500人以上の方の人生の晩年に寄り添うことで見えてきた大切なポイントがあります。
(1)伝える前の準備のポイント
@ 子ども同士で情報共有を行う
兄弟姉妹がいる場合は、親に話したいことを必ず前もって相談しておきましょう。
相談しないで親と話をするなど、ひとりで勝手に進めてしまうと、兄弟姉妹との信頼関係を損ねトラブルにつながる可能性があります。
A 親子でコミュニケーションをはかる
本音を言える、建設的に話し合える信頼関係づくりがはじめの第一歩です。
ふだんから連絡をとりあう間柄ではないのに、いきなり本題に入ってしまうとトラブルになるので注意しましょう。親御さんが気分を害されたり、不信感・猜疑心が生まれてしまいますし、これまでの信頼関係が崩れてしまうかもしれません。
<ポイント>
・定期的に自宅訪問、電話連絡をする。
・愛情と気遣い、思いやり、感謝を言葉などで形にして伝える。
B 親御さんに話したいことを前もって準備しておく
知人、テレビ、雑誌、専門家のセミナーなどから得た実際の体験談エピソードを活用しましょう。
話の内容例 |
準備しておくと助かる理由を具体的に話をする
・準備しておけば、何かあっても、適切なサポートができる。 ・突然倒れたときでも、こうしてほしいと前もって言ってくれていれば、希望どおりに対応ができる。 ・準備しておけば家族みんなが安心。困らなくても済む。 |
準備しておかないと困る理由を具体的に話をする
・心の準備ができておらず、突然のことにあたふたしてしまう。 ・お互い離れて暮らしているのだから、準備しておかないと直ぐに助けにいけない。仕事を休むなど急な対応が必要となってしまう。 ・もし脳梗塞で倒れて意志表示ができない状態になってしまうと、どのような治療を受けたいのか聞くこともできなくなってしまうので、希望を叶えられなくなってしまう。 ・子どもが入院費などのお金を立て替えなければならなくなってしまう。 教育費や家のローンで立て替える余裕がないし、自分たちの生活もままならくなるのは困る。 ・介護が必要になった時に、子どもたちで役割分担を決めておきたい。サポートしたいけれど、みんな育児や仕事などがあるので、前もってどうすればいいのか話し合っておきたい。 |
(2)伝えるときの話し方のポイント
話すタイミングやきっかけ |
・テレビや新聞、雑誌などで「終活」などの話題が取り上げられ親御さんの意識が高まった ・親御さんが断捨離やエンディングノートの作成など具体的に行動をし始めた ・親御さんが病気で入院、手術をした、介護が必要になった ・友人知人、親戚が老後や介護のことでトラブルになってしまった ・片親が亡くなった ・友人や知人、親戚が亡くなった ・親御さんと同世代の芸能人が亡くなったことがテレビなどで報道された ・親御さんが定年退職を迎えた ・親御さんが後期高齢者(75歳)になった ・親御さんが還暦、古希、喜寿など長寿祝いを迎えた ・孫が大学に入学したり、社会人になった ・年末年始やお盆に子供が実家に集まった ・社会情勢(コロナ流行、自然災害、経済状況など)が大きく変化した |
親御さんに話す順番
子どもへの不信感を抱いたり、これまでの信頼関係が崩れてしまいます。 回りくどくても順を追って話をしていくことが大切です。 |
@ 何気ない世間話で場を温める
ざっくばらんに話せる雰囲気をいかに作れるのかが肝要です。
A 親御さんの話を聞く(現状や想いを知る)
・今の健康状態
・今の不安や心配
・今の気持ち、考え、想い
・今の関心事など
親御さんの言葉にただひたすら耳を傾ける。
B 親御さんへの共感、ねぎらい、愛情、気遣い、感謝を言葉にして伝える
いくら心の中で思っていたとしても、言葉にしないと伝わりません。照れくさかったり、気恥ずかしかったりするかもしれませんが、きちんと言葉にしてみましょう。
C 本題に関連する導入の話題を切り出してみる
知人、テレビ、雑誌、専門家のセミナーなどから得た実際の体験談エピソードをもとにこんな場面で困ったとか、大変な思いをしたらしいと感情に訴えかけましょう。
自分たちも他人事ではない、明日は我が身であると自分に置き換え、自分事として捉えてもらえるようにすることがポイントです。
「突然、心筋梗塞や脳梗塞で倒れて意識がなくなった時はどうなる?」と具体的な場面を提示し、親子でどんなことが困るのか想像してみましょう。
D 本題(子どもとして親に聞いておきたいこと、準備をしてほしいこと)を投げかけてみる
相続のことを聞きたくても、まずは、病気、介護など親御さんにとって差し迫ったことから聞いていきましょう。
「準備は一緒にやっていこう、難しいことではない大丈夫」と、親御さんだけに負担をかけるわけではないことを強調しましょう。
親御さんの考えや言い分を頭ごなしに否定しない、子どもの考えを一方的に押し付けないようにしましょう。
(3)うまく話を進めていくためのポイント
ポイント |
必要に応じてお母様からお父様へ働きかけてもらいましょう
女性は前向きに捉える傾向がある。また、夫が病気や介護が必要になった時には身の回りの世話をしなければならないので、常日頃から老後や介護について問題意識をもっている場合が多い。 男性は面倒臭いと先送りにしたり、ネガティブなことに対する恐れから目を背けてしまい、考えたくないと逃げ腰になる傾向がある。 |
急がば回れ!焦らないでじっくりと話をしていきましょう
親御さんの健康状態や生活が安定しているときは話を小出しにする。話すタイミングを見図る。 話を切り出した時に親御さんに拒否されたり、反応が薄かったとしても時間をおいて、状況の変化を待つ。 親御さんが必要性を感じていないのに、子どもが先走って進めようとすると親御さんの気持ちを損ねる、信頼関係にひびが入り、怨恨を残す。将来のトラブルにつながってしまう。 ただし、病気や介護、入院など急を要する時には一気に話を進めないといけないことも多い。その場合、必ず子ども同士で情報共有をした上で、できれば親子全員で顔を揃えた場面で話をする。 |