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くらしの法律情報
2023年06月05日 [くらしの法律情報]

【解決事例】現存しない会社が不動産の登記名義に残っていた!

ページをご覧のみなさま、司法書士の福井です。
今回は登記簿謄本に「現存しない会社が不動産の登記名義に残っていたケース」の解決事例を取り上げます。
現在、所有者不明土地を解消するために国が様々な施策を講じており、来年には相続登記の義務化も始まります。その流れで今回のように既に存在しない会社が登記名義を持っているようなケースも出てくるのではないでしょうか?
これまではあまり見られないケースでしたが、類似のケースでお困りの方もいらっしゃるかもしれませんので解決までの概要をご紹介いたします。




数十年前にとある町で5区画ある新築分譲がされました。
その土地を開発した会社が自社名義で5区画の共用道路の共有持分の一部を所有して登記をしていたのですが、それから数年後に業績の悪化により破産してしまいました。
通常、会社が破産をすると、弁護士が破産管財人に選任され、その会社の財産の管理と精算を行い、全て清算が終わった段階で破産手続きが終了となるのですが、この会社の共用道路の持分は、この破産手続きにおいて清算されないまま残ってしまっていたのでした。


その原因は、共用道路は一般的に公衆用道路として非課税、つまり固定資産税が課されていないため、その会社自身もその持分の存在を把握していなかったということにあると思われます。
破産管財人の弁護士さんも、会社が所有していたであろう資料をくまなく精査したとしても、非課税の道路持分を探し出すことはほとんど不可能に近かったことでしょう。
このような経緯があったと思われますが、この破産手続きが終了してしまった会社の不動産持分について、この度、この分譲住宅の所有者で分け合って登記をする必要があるとのことでご依頼をいただきました。
この会社の登記記録を見てみると、破産手続きが終了した後に、清算人が就任ししばらくしてその登記が抹消され、というのが繰り返されているのでした。
これは、いわゆる「スポット清算人」と呼ばれるもので、この会社で清算されていない財産が発見される都度、利害関係人によって清算人の選任が裁判所に申し立てられ、その精算事務が終了するとその清算人の登記が抹消される、というもので、裁判所の運用で特別に認められている制度です。



当所でこのスポット清算人の事案を取り扱うのは初めてでしたが、幸い、この清算人に就任しては事務終了後に就任登記を抹消されるというのが同一人で繰り返されていたため、その方の情報を調べたところ、当所からほど近いところに事務所を構えている弁護士さんであることがわかりました。
事前に電話で事案照会をしたところ、今回当所が依頼を受けたケースも、これまでその弁護士さんがスポット清算人として処理してきたものとほぼ同様のものであるとのことで、清算人に就任して協力をしていただけるとの返答をいただき、手続きをスムーズに進めることができました。
なお、スポット清算人を選任するための費用として、裁判所に予納金を約20万円、そして分譲住宅の所有者に持分を分けるのも無償譲渡とすることはできないということで、売買により代金をスポット清算人に支払う必要がありましたので、それなりのコストはかかるということも勉強になりました。

これまでもご紹介をしてきた、所有者不明土地を解消するという国の制度設計が進んでいますが、このように既に存在しない会社が登記名義を持っているケースというのも所有者不明土地に該当するのだと実感しましたし、同様の事例もまだまだ出てくるのではないかと思います。
スポット清算人という特殊な手続きで、所有者不明土地問題の一つを解消できたという達成感を感じる一方、日数としても約半年、費用も数十万円かかった手続きでしたので、そのあたりがネックとなって今後の解消の妨げになっているのではないかとも感じた貴重な経験となりました。
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