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くらしの法律情報
2021年10月06日 [くらしの法律情報]

遺言のよくあるご質問

遺言
本ページをご覧のみなさま、司法書士の福井です。
今回は「遺言」についてお客様からよくご質問いただくことをまとめてみました。
遺言は法律で厳格にルールが決められています。せっかく作成した遺言が無効にならないように最小限の知識を得ておきましょう。



遺言にはいくつかの作り方がありますが、最もオーソドックスな2つの方式についてお伝えします。

1.自筆証書遺言
もっともポピュラーな遺言です。
遺言者自身で文面を全部自書し、日付、署名、押印をすることで完成します。
メリットとしては、作成が容易で費用がかからない、ということです。
デメリットとしては、ご本人のみの判断で内容を記載したものの適法性を欠いてしまっている場合があったり、紛失のおそれや遺言書の内容で不利益を受ける者が改ざんや毀損をしてしまうという可能性があることです。なお、相続人が遺言書を改ざん、毀損した場合、相続欠格事由に該当し相続人になることができなかったり、私文書偽造罪に問われることとなります。
さらに、デメリットというわけではありませんが、自筆証書遺言は遺言者が亡くなった後、相続人において家庭裁判所での検認という手続きをとらなければ、遺言書にもとづく相続手続きを進めることができないため、遺された相続人にやや負担がかかるといえます。

※検認とは
遺言書の偽造や変造を防止するためのものであり、遺言書が有効かどうかを判断するための手続きではありません。遺言の方式やルールに則って作られていない遺言が、検認を受けることで有効になるわけではありません。

※「2020年7月10日開始:法務局による遺言書保管制度について」
以前のブログでも詳しくお伝えしましたが、法務局による自筆証書遺言書の保管制度が開始されました。

2.公正証書遺言
遺言書の内容を公証人が作成し認証する遺言です。
われわれ司法書士が作成に関与することの最も多いものでもあります。
メリットとしては、公証人やわれわれ司法書士が作成に関与するため内容の適法性を欠くおそれがなく、原本が公証役場で保管されるため、紛失のおそれもなく、相続人による改ざんや毀損をされるということもありません。また、遺言者が亡くなった場合、家庭裁判所の検認手続きが不要で、遺言書にもとづいて各相続手続きを速やかに進めることができます。自筆証書遺言のデメリットの裏返しといった面が多いです。
デメリットとしては、作成費用がかかる点と公正証書作成の立会い証人2名(親族等の利害関係人は不可)が必要となる点が挙げられます。



「自筆」「公正証書」それぞれのメリット・デメリットについてご説明しましたが、公正証書遺言のほうがメリットのほうが大きく、確実性と安心感がありますので、特に複雑な内容の遺言を作成する際には「公正証書遺言」をおススメしています。
「法務局による遺言書保管制度」が施行されたことで「自筆証書遺言」も法務局で保管してもらえることになりましたので、紛失の恐れはなくなりましたが、法務局は遺言書の内容の審査まではしない、つまり、法的に有効性が認められない自筆証書遺言でも保管されてしまう可能性があります。せっかく書いた遺言が無効になったり、願いどおりに実現されないという残念な事態がおこらないように準備をしっかりしておくことが重要になってきます。



遺言があれば、相続人全員による遺産分割協議を経ることなく遺言どおりに遺産が分けられるので、トラブルの防止にもなります。
特に次のケースに該当する場合は、ぜひ遺言書を遺すことをおすすめします。

1.結婚しているが子供(実子、養子)がいない場合
 遺言を遺さなかった場合、ご本人が亡くなった後は法律上、@配偶者とご本人の実親、A配偶者とご本人の兄弟姉妹、の順で共同相続関係となり、たとえばご本人名義の不動産や預貯金を配偶者が相続しようとしても、義理の父母もしくは義理の兄弟姉妹と遺産分割協議などの手続きをとらなければならず、遺された配偶者への負担がとても大きなものとなってしまいます。

2.再婚をしているが前の配偶者との間に子がいる場合
 離婚したとしても、実の子どもとは法律上の親子関係は継続し法定相続人の地位がのこります。再婚相手とその家族に財産を残したいのであれば、その意思を遺言書に遺すべきでしょう。ただし、実の子どもには遺留分権(法定相続分の半分を請求する権利)がありますので、全ての財産を再婚相手とその家族に相続させる内容の遺言を遺したとしても、完全には実現できない可能性もあります。

3.長年連れ添った婚姻関係にないパートナーがいて財産を残してあげたい場合
 上記1と異なり、法律上の婚姻関係がない場合、遺言書を遺さなければ、このパートナーには一切相続権がありませんので、ご本人が亡くなった場合は法律上の相続人のみで遺産を分け合うこととなってしまいます。

4.財産がもっぱら不動産である場合
 財産が預金や有価証券であれば、相続人が複数いても分け合うことが可能ですが、不動産が相続財産である場合、遺言書がなければ、複数の相続人で話し合いをして分け合うということになります。相続人どうしが円満な関係であれば問題ありませんが、関係性がよくなければ、最悪の場合、不動産の相続をめぐる争い(裁判手続き)に発展しかねません。現在の民法では、いわゆる遺留分を請求する相続人に対しては金銭で解決することになっているため、遺留分を請求されても不動産を渡す必要がないので、遺言書で不動産の帰属先を定めれば、その指定された相続人が不動産を取得することができることとなっています。


 上記1〜4に当てはまる場合は、ぜひ公正証書遺言で遺言を遺すことをおすすめいたします。
当事務所でも遺言作成のサポートをさせていただいておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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